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​【アルバムレビュー】

この背徳的な気分は飲酒によく似ている。

GUEVNNA「Heart of Evil」

2019.6.22 櫻井螺子
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GUEVNNAは日本のロックバンドである。巷ではアーバンストーナーだなんて言われている。

アーバンストーナー?

初めて聞いたらなんだそれはと思うだろう。なんならバンド名の読み方すら分からない。

得体の知れないバンドに見えるだろう。

 

M1「Black Ghost」のザラザラでスローなイントロはこのバンドをよく知らない人たちの不安を煽っているように見える。赤錆のような色合いでグロテスクなジャケットも精神衛生上よろしくない。

 

ギターやベースの音も暗い。まるで都会の切れかかった街灯のようだ。もしくは建造物に日差しを遮られ続ける路地裏だ。とにかく人工的で退廃的なイメージを抱いてしまう。

 

「Black Ghost」のイントロは都会の闇だ。飲み込まれてしまいそうになるほどの巨大なダイナミズム。自分がちっぽけな大多数の1つであることを認識せざるを得ない。

 

おまけにこのバンド、ボーカルががなり声なんだ。歌詞は全部英語だろうか。たまに聞き取れる箇所はあっても基本的には何を歌っているのかはよくわからない。歌詞カードもない。

 

我々が普段耳にする音楽と比べると聴きにくい音楽である。なんだか恐いから小さい子供には聴かせたくないし、もし聴いていたら取り上げたくなってしまうだろう。やはり得体の知れないバンドである。

 

 

もちろんそれだけでは終わらない。今までの内容はまだ1曲目のイントロの先端部分でしかない。起承転結でいう起の1画目のようなものだ。

 

恐る恐る開いたイントロの先には軽快なリズムが待っているのだ。

これは何かの宴なのか。それとも最後の晩餐なのか。

このままずっと楽しいままでいられたらいいなと願わずにいられなくなるようなアップテンポの曲を次々と畳みかけてくる。

 

タイトルトラックにもなっているM3「Heart of Evil」はドラムの4つ打ちが印象的だが、土着的でだんだんとボルテージが上がっていく様はディスコやクラブミュージックといった音楽よりも祭囃子っぽい印象を受ける。

 

確かな質量を感じるほどの重厚さではあるが、ドラムはさほどメタルやハードコアのような威圧感はなく、軽快なリズムを刻んでくれる。

 

GUEVNNA - "Heart Of Evil" Official Video

引用元: LongLegsLongArms YouTube

あとボーカル。先述したとおり、しゃがれ声で何を歌ってるかさっぱり分からないが、ときおりはっきりと聴きとれる部分がある。サビとか。

あまりにもはっきり聴きとれるもんだから思わず拳を突き上げて一緒に歌いたくなってしまう。

 

キャッチーな要素もあり、楽しげな雰囲気があるが、サウンドは暗いままだからなんだかいかがわしいことをしているような気にもなってくる。

 

この背徳的な気分は飲酒によく似ている。

 

飲む前のワクワクやドキドキ。最中の解放感。そして一通り身体に酒が回った後のダウナー感。それを乗り越えた第二波。このアルバムは朝まで飲み明かした夜にとても近い。しかも結構楽しい夜だ。

 

そう考えると背徳的だとか子供に聴かせたくないというのもなんとなくではなくはっきりと言える。

誰だって泥酔している姿は人に見られたくないものだ。

 

その証拠に日本では子供は飲酒できないことになっている。お酒は人をダメにするから。

あと夜更かしもだめ。それは大人の特権なのだ。

 

この作品はそんな大人の密かな楽しみを感じる。みんなが寝静まったころに都会の日が届かぬ地下室で日々怪しげな宴が開かれるのである。

 

たまにはそんな場所で人の目を恐れず踊ってみてはいかがだろうか。

きっと小さな子供にズルいって思われるような大人になってしまうだろう。

 

GUEVNNA - Parasitic [ LIVE ]

引用元: LongLegsLongArms YouTube

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