MAGAZINE

2018.7.19  櫻井螺子

​【アルバムレビュー】

泥は泥でも身体に悪そうな感じはしない。

むしろ美肌効果に期待できそうだ。

OiDAKi 「Sulphur Pusher」 (2017)

7月です。この季節は外に出るのが大変ですね。

 

半年ほど前に気付いたことなのですが、人々がよく口にする「暑い」という言葉は単に暑くてどうしようもないことを嘆いているのではなく、「暑い」という共通の話題からコミュニケーションを発展させているのです。凄いですね。

 

とても高度な技でありますが、一度覚えてしまうと一生使えますね。

もっと早く知っておきたかった……。

 

でも今年は大丈夫。なんといってもこれがあるからだ!

OiDAKi「Sulphur Pusher」

このOiDAKiというバンドは宮城県仙台市を中心に活動しているらしい。どんなバンドなの?と聞かれたらちょっと困っちゃう。サイトのほうではHard Rock Violenceと書かれているが、もっと簡単にいうならばハードコアパンクだ。

叫びまくるボーカル、暴力的な音のギターはまさしくそれだ。

 

私はこのアルバムでこのバンドを知ったのでアルバム以前はどのような音楽をやっていたのかは知らないが、このバンドのドラムであるウエダ氏はスラッジをやるために大阪から仙台にやって来たらしい。凄い。

 

そんなウエダ氏のドラムはアグレッシブに、そして重たい一撃を放ってくる。でもどこか土臭い印象を受ける。なんでだろうね、わかんない。でもこのドラムを聴いてるだけで血沸き肉躍るような感覚が生まれてくる。この感覚はアルバムのどの曲を聴いていても沸き起こる。

 

エネルギッシュに疾走する様子はまるで火山だ。ボーカル、ギター、ドラム、ベース。バンドサウンドの全てが聴き手に降り注いでくる。要注意。

 

1曲目である「くさばみ」のイントロから風情のあるギターが飛んでくる。暑い日にはとても心地よい。和室で夜風に当たりながら素麺を食べたくなってくる。

その後、雪崩が如く爆発していくが全体的にブルージーでハードコアが苦手な人でもある程度は聴けるのではないかと思う。

 

この曲を聴いてると思わず幼き頃の記憶が蘇ってくる。田舎の山の中、虫取り網を片手に走っていたある記憶だ。あの頃は目に映る全てがダンジョンにみえたなあ……。

そんな思わず懐古したくなるこの曲をジャパニーズストーナーロックとして推薦したい。

 

PVも作成されたM2「硫黄」は先ほどの「くさばみ」にも感じられた大自然のパワーと生命力をさらに加速させた1曲である。曲名にもある通り、噴火したかのようなテンションの高さだ。後半の溶岩のような粘り気のある展開も最高だ。単にハードコアとストーナーロックをミキサーでかき混ぜたのではなく、咀嚼したかのような作風に日本人らしさというのを感じる。

 

OiDAKi - 硫黄

 

続いての「メズラマイズ」の残虐的なブギーとここまでかなりロックしてる。しかもハードだ。ここまで聴いたらHard Rock Violenceというのも凄くしっくりとくる。しかもストーナーロックとハードコアを混ぜてよくわからなくなってしまったわけでもなく、それぞれの特徴がはっきりと曲に現れてくる。

どちらかは聴くけどどちらかは聴かないという人にもしっかりとアピールできてハッピーだ。私はどっちも大好物なのでかなりハッピーだ。

 

しかし、後半からは雰囲気が変わる。

 

ストーナー、ハードコアのドス黒い部分が一気に見え始める。繰り返されるブルージーでへヴィなリフはかなりの粘り気を帯びており、確かな質量を感じさせる。泥に浸かったような気分だ。まさしくスラッジコア。前半の曲をしっかりと浴びていないと苦しいと感じるかもしれない。

特にM6「ステート」はこれまでの曲とは違い、アンダーグラウンドなハードコアでこの曲だけ聴いたらなんか恐い人たちだなあと思ってしまうこと間違いなしだ。

 

しかし、泥は泥でも身体に悪そうな感じはしない。むしろ美肌効果に期待できそうだ。

M5「深呼吸」のへヴィなリフの後にやってくるギターソロやその後の展開は体の中に潜む悪しきものが放出されたかのような開放感を感じる。それはこの曲に限った話ではない。

 

OiDAKiの曲はどれも大自然のパワーを感じる。その要因がこのへヴィなリフの後に待っている開放感なのかもしれない。

それはとても気持ちの良いエネルギーだ。実際歌詞カードを見るとM5「深呼吸」は作中で最も前向きな歌詞であり、トリを飾るM7「フィアレス」の開放感は凄まじい。

 

今年も暑い日が続くが冷房を切ってこのアルバムを聴いてみてはどうだろうか。きっと気持ちのいい汗が流れてくるかもしれない。

熱中症には気を付けて!

  

ちなみにこのバンドの公式サイトでは‘Onsen’Blogなるものが存在しているが色々と難易度が高いので是非とも挑戦してみて欲しい。

CATEGORY

PICK UP

pickup3.png

WRITER

田中千秋楽​

Tanaka-Senshuraku

ヤマダ ヒロミチ​

Hiromichi Yamada

櫻井螺子​

Neji Sakurai

ミネラル

Mineral

© 2018 by LITTLE REX QUEEN RECORDS